Art & the World Expos: From the Crystal Palace to Osaka 2025
2025年5月31日(土) 13:00‑17:00
入場無料
要事前予約(定員100名)/以下のフォームにてお申し込みください。締切は前日正午としますが、会場定員の関係で、お申し込みが100人に達した時点で受付を停止させていただきます。
2025年、ふたたび大阪で万国博覧会が開催される。「Expo70」における岡本太郎《太陽の塔》にみられるとおり、万博はさまざまな芸術作品もしくはジャンルの誕生や興隆のきっかけだった。藝術学関連学会連合第19回公開シンポジウムは、芸術と万博との関係、あるいは、そもそも万国博覧会という存在をあらためて検討する。
1851年ロンドン万博を嚆矢とする万国博覧会または国際博覧会(「Exposition universelle」)においては、1970年の「月の石」など、新たなテクノロジーやその成果だけでなく、社会インフラやさまざまな芸術の最先端が紹介され、普及のきっかけとなった。第一回ロンドン万博においてロンドン市民は「クリスタルパレス」によってはじめて近代技術の進歩を体感した。川上貞奴は1900年パリ万博を機に欧州社交界の寵児となった。ジャポニズムのきっかけとなった浮世絵も万博で紹介されたものである。
万博は芸術制度整備にも一役買った。国立国際美術館が1970年「万博美術館」を礎としたことはよく知られているが、東京国立博物館も、日本政府がはじめて参加した1873年ウィーン万博の準備として湯島聖堂で開催された官設博覧会が前身だ。
一方、万国博覧会そのものも検討を必要とする。先端技術や芸術、諸外国の文物が紹介され、人的交流の促進、外交や経済振興に資するのはポジティブな側面と言えるかもしれない。だが、その一方、1878年パリ万博以来、2000年代まで続く「人間動物園」やそれに類する存在に見られる「ヨーロッパ中心主義」「植民地主義」「オリエンタリズム」、また、根底にある「近代的進歩至上主義」など、万国博覧会は近代の歪みを凝縮するものでもあった。
藝術学関連学会連合の公開シンポジウムにおいては、従来、各学会で深められていた知見を交換し、「藝術から見ての万博、万博から見ての藝術」を解明するとともに、万国博覧会の光と影を立体的に浮かび上がらせることが期待しうる。たとえば次のような論点だ。
Ⅰ 芸術各ジャンルにとっての万博…建築、デザイン、絵画、造形、音楽、映画、演劇、舞踊、パフォーマンスなど、各分野の芸術にとっての万博、万博における各芸術を解明する。
Ⅱ 万博と芸術制度…どうして1851年に万博が始まったのか。万博の隆盛は、ミュージアムや「美術史」などの大学講座、芸術ジャーナリズム、「個人」「自由」「創造」という理念など、制度としての芸術の整備と軌を一にし、同時に、「進歩主義」「近代主義」「ジャポニズム」「オリエンタリズム」「植民地主義」などの温床ともなった。その実態を解明する。
Ⅲ 万博の過去・現在・未来…ポジティブにもネガティブにも、2025年の現在と「Expo70」の熱気とでは比較すべくもない。Expo70は、高度成長期と冷戦という近代の渦中にあった。その後、日本も世界も後期近代へと移行し、いまや「万国博覧会」自体が「賞味期限切れ」ともいわれる。「クールジャパン」など、万博をとりまく文脈や文化政策も変化し、それに伴って、現状にふさわしい「ソーシャルアート」もしくは「未来共創プロジェクト」といった万博の新たな可能性も模索できるだろう。それはなんなのか。
上記、どの論点についても膨大な先行研究の蓄積がある。それとどう批判的に向き合うのかが本シンポジウムの課題である。