Epidemic and Art
2022年6月11日(土) 13:00〜17:00
ハイフレックス(対面とZoomの併用)開催
対面会場:早稲田大学戸山キャンパス34号館151教室(予定)
疫病が変える社会
芸術は免疫たりえるか
思想・歴史・実践の視座から思考する
開催の詳細につきましては後日掲示いたします
参加無料
2019年末に発端し、またたく間に世界に蔓延した新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が、社会の仕組みや私たちの日常に大きな変容を迫る中、芸術に関わる諸領域では、人類が蓄積してきた芸術という営みの中に、今般、世界が直面する事態に関わる経験や叡智が探索され続けている。
今回のシンポジウムでは、思想・歴史・実践の三つの観点から、疫病と芸術について考える。
疫病は、ふだんの人間的営み同様、芸術的営みをも著しく制限する。
その一方で、古来芸術は疫病を表現してきた。しかし近代以降、政治が健康、公衆衛生、出生率、死亡率などの観点から人間の身体を統轄するようになると、疫病を直接表現した芸術だけでなく、何気ない人間生活や風景を描写した芸術でさえ、裏に疫病との対峙・克服を忍ばせた政治性や思想性を帯びざるをえない。
20世紀末、HIV/AIDSの出現とともにあらためて意識された「生政治」、「免疫」の概念は、むしろコロナ・パンデミックにおいてこそもっとも鋭く時代を映し出す芸術上のメタファとはなっていないだろうか。
第一部では、このような問題意識のもと、「疫病と芸術」を思想面から論じ合う。
パンデミックの渦中で意識されるようになった、ペスト、疱瘡、衛生と芸術という論点の先に、私たちは、疫病と人類をめぐるいかなる歴史を浮き彫りにできるだろうか。
過去の芸術作品の中に、繰り返された疫病の痕跡を辿り、疫病と対峙することで獲得された世界観や信仰をひもとく。
他方、今般のパンデミックをめぐる思考や経験、記憶は、これからの社会に深く内在し続けるであろう。芸術という営みを通じて私たちはいかなる未来を構想し、実現することができるのか。このこともまた問われなくてはならない。
以上の観点を踏まえ、第二部では、過去と現在を架橋し、私たちの社会における芸術の役割についての議論、疫病を梃子にした芸術創造への新たな展望がひらかれることをめざす。
この度の疫病により、モダンダンスやコンテンポラリーダンスにおいては、公演の中止、無観客の動画配信、観客数削減、動画同時配信開催などの対応をし、活動を続ける舞踊家へは公的支援がなされた。
ワークショップなどもオンライン開催が増えたが、対面でしか得られないことは多くあり、もどかしい。一方、対面でのリハーサルはマスク装着による視覚嗅覚の遮断や息苦しさがある。ネット上の情報発信が求められつつも、生身の身体が相対することが最重要であり、収束を祈るばかりである。他の芸術領域ではどのような影響があるのだろうか。
第三部では、疫病が芸術実践にどのような影響を与えたのか、今後どのような方向に進むのか示唆してくださる方の登壇を求む。
免疫と例外状態(非常事態)という語があたかも対概念のようになってメディアで踊っている。政治と生物学にかかわるこれらの用語は、しかし、芸術ともまた無関係ではありえない。
とりわけ近代以降の芸術の自律化は芸術の免疫化と言い換えることもできるだろうし、このときから芸術はいわば例外としてみずからを特権化——美学的のみならず司法的にも経済的にも——してきた。
コロナ禍を機に、この二概念を手掛かりに芸術の近現代的状況を再考してみたい。[詳細]
1918-20年にかけて大流行したスペイン・インフルエンザは、同時期の第一次世界大戦の陰に隠れた「忘れられた」パンデミックであった。また、スペイン・インフルエンザの惨禍を直接表象した美術作品も少ない(罹患したといわれるムンクの自画像や、エゴン・シーレの家族の肖像など)。
しかし、戦場における大量殺戮と見えざるウイルスによる大量の死者は、決定的な「精神の破局」をもたらしたのである。
スペイン・インフルエンザが20世紀美術にいかなる影響を与えたのか、第一次世界大戦との関わりも含めて、幅広い視点から再考する。[詳細]
密閉されたホールに大人数の観客を詰め込み、決められた時間枠の中で出し物を提供するというコンサート制度は、19世紀半ばごろに生まれたものである。
コンサートとは「人が集まる」ことであり、コロナによってこの制度が存亡の危機に瀕している今日、制度成立の前提になっていたものを、一見「芸術」と無関係に見える「技術」の文脈で振り返ることは、音楽の明日を考えるためにも無益ではないであろう。[詳細]
2020以降、コロナ感染対策の為ダンス公演は数多中止となってきた。代案として、無観客配信公演が消去法的に選択され、多くの主催や振付家、ダンサーたちはこの形式を初めて経験することから現在に至っている。
以来2年が過ぎて、変種株の流行の合間や、感染対策を入念にすることで、昨今では、対面公演が行われるようになっている。
本発表では、この新たに起こってきた配信公演をめぐって、その実践的な意義を明らかにする。[詳細]
録音再生・複製技術、放送・放映・配信メディアが発展・普及した現代社会において、我々の芸術享受のあり方は、久しく前から、実際に音やパフォーマンスが生れる「場」や作品の実物に立ち会わない、間接的、非対面によるものがむしろ標準化している。はや2年を超えるコロナ禍では、無観客公演のライヴ配信なども登場した。
本報告では、リモート合奏・合唱といった事例とも併せて、それらの試みが改めて浮かび上がらせた、芸術実践とその享受における「場」の共有と身体性の問題について考えたい。[詳細]
藝術学関連学会連合事務局
横道仁志 esthe{at}let.osaka-u.ac.jp